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TKC東北会秋田県支部主催の講演会
インテリアデザイナーの吉田恵美さん
「アメリカで学んだ、不動産価値を高めるデザインの力」

 令和5年6月2日(金)、秋田市中通の「秋田キャッスルホテル」で開催されたTKC秋田県支部主催の講演会に、当法人の会員12名が参加しました。講師はニューヨークを拠点に世界で活躍するインテリアデザイナー、吉田恵美(よしだ・さとみ)さん。家づくりのプラットフォーム「Houzz(ハウズ)」の「Best of Houzz賞」に10年連続で受賞した経歴を持つ吉田さんに、「アメリカで学んだ『不動産価値を高めるデザインの力』」のテーマで語っていただきました。

【人とつながり、空間と生活の質を高める】

 福岡県出身の吉田さんは高校卒業後、留学してアメリカのアイオア州立大学に入学。「言語の壁や職業選択の壁にぶつかったが、東欧のサマースクールで行ったチェコスロバキア(当時)で建築と建物内部の空間を見て、歴史や文化に感銘を受けインテリアデザイナーを志した」と振り返ります。
 当時、日本ではまだこの職業に馴染みがなく、建築会社を点々としながら再び挫折を覚えていた時、シアトルの大手建築会社「NBBJ Architects」に就職。在籍した4年間でホテルやコーポレートデザイン、駆け出しの頃のスターバックスの仕事など大きなプロジェクトに関わり、「人生の新しい1ページがスタートした。この時の経験が今につながっている」と話します。
 2005年、結婚を機にデザインスタジオ「YZDA Yoshida+Zanon Design Atrium」を創業。ニューヨークとニュージャージーに拠点を置き、住宅デザインの分野で活躍しています。
 ご主人の転勤もあって、11年間に8回の引っ越しを経験。「シアトル、サンフランシスコ、デンバーなど、全米各地の“地域を眺める”という特性が身についた。大変だと思わずその地域性を生かすため、とにかく楽しもうと決めた」とプラス思考。
 インテリアデザイン、内装、商業デザインなどをコーディネートも含めトータル的に手がけ、デザインだけでなく製図や施工管理、プロジェクトマネジメントなど活動範囲は多岐にわたります。世界中から材料を集め、クライアントにものづくりの現場も見せながら、コミュニケーションを図っています。
 吉田さんは「インテリアデザイナーの仕事は、住む人の空間の質、生活の質を高めること。人とのつながりを大切にし、クライアント1人1人の思いを大切にしながら仕事をしている」と強調。建築家やエンジニア、施主、不動産エージェントなど様々な人とつながり、予算と時間の制約がある中で「クライアントが求める理想の『少し上をいく』仕事」を心がけることで、リピートにつなげているそうです。

【“長く住む”に投資する文化】

 日本の住宅市場では新築物件が人気ですが、アメリカでは機能や場所が良ければ中古需要のほうが多いそう。ホームインスペクシクョン(住宅診断)を重視し、プロのインテリアデザイナーを依頼することも「時間とサービスへの投資」だと考えます。歴史をきちんと守り、築100年200年の家がその都度その都度、見直されて修復されていく―という長いスパンに投資するのがアメリカの価値観で、リフォームやリノベーションに需要があります。
 インテリアデザイナーとしては、「生活環境や宗教、経済、歴史などを踏まえてクライアントの生活を見極めながら、その人達の個性やこだわりを引き出すことが大事。その時の価値、求められていることをすべて聞きながら仕事をしている」とのこと。
 中古住宅の投資価値を高めるには、「五感を生かす」ことも重要だそうです。例えば誰かが住宅を売却する際、インテリアデザイナーは外装を変えて住宅の第一印象を美しくしたり、プロが撮影した写真でアピールして視覚を刺激します。オープンハウスではクッキーやシナモンロールを焼いて嗅覚に訴えたり、触覚や温かさ、音(水の音や鳥のさえずり)も含め、五感を生かして生活を想像できることが大切だといいます。
 吉田さんは2018年、東京にサテライトオフィスも設立し、地域の不動産価値や投資価値を上げる活動を展開。最近はデザインだけでなく、講演会やセミナーなどを精力的に行うなど活動の幅を広げており、「学生やものづくりの現場にも刺激を与えられるような活動を長いスパンで継続させ、ソーシャルインパクトという形でも社会貢献していきたい」と話していました。