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TKC東北会秋田県支部主催の講演会
~北都銀行バドミントン部総監督 原田利雄さん~
~講談師 日向ひまわりさん~

 令和2年2月3日(月)、秋田市中通の「パーティーギャラリーイヤタカ」で開催されたTKC秋田県支部主催の講演会に、当法人の会員16名が参加しました。
 今回は、世界で活躍するバドミントン「ナガマツペア」の生みの親・北都銀行バドミントン部総監督の原田利雄さんに「なぜ日本のバドミントンは強くなったか?~北都銀行バドミントン部 史上初世界選手権大会二連覇の軌跡~」の演題で講演いただいたほか、講談師の日向ひまわりさんが、「広岡浅子『九転十起の女』」と題して生の講談を披露してくださいました。

【第1部】
 原田総監督は、能代市二ツ井町出身の56歳。2019年にバドミントン女子ダブルスで世界選手権2連覇を果たすなど、国内外で活躍する「ナガマツペア」(永原和可那・松本麻佑ペア)をはじめ、北都銀行バドミントン部を上位チームに育てた方です。
 「県民・市民から応援されるチームをつくってほしい」とオーナーに頼まれ北都銀行の指導を始めた原田監督。その後はリーマンショックや東日本大震災があり、大企業のバドミントンチームも次々と廃部に追い込まれますが、北都銀行は生き残り、活躍し続けています。
 国内外で行われる年間の大会数は相当なもので、監督も選手も1年のほとんどをバドミントンに費やしているそうです。私たちはメディアなどでその輝かしい戦績を目にしますが、賞金やランキング争い、ケガやリハビリなど、光の影には辛いことがたくさんあります。原田監督は「そこをどう乗り切るかで、今後が変わる。そのことを教えるのも、私たち指導者の務め」と話します。
 そんな原田監督の指導で印象的だったのは「アスリートである前に企業人・社会人であれ」ということです。「バドミントンの大会遠征や練習だけをしていては、いつか部はなくなる!」という考えのもと、たとえ遠征帰りであっても銀行で働く時間をしっかり確保しています。
 昨今はスポーツ界でもパワハラなどの不祥事が取りざたされ、ただ勝つだけでなく、モラルや品性がより問われる時代。北都銀行バドミントン部では、「自分の環境を嘆く前に努力すること」や「支えてくれる周囲の人たちへの感謝の気持ちを持つこと」「地域貢献を仕事と思い、子どもたちに夢を与えること」など、多くのコンセプトを掲げ、実践しています。
 私たち企業人にも、目の前にある本業だけでなく様々な活動が必要とされている時代。バランスを取るのは簡単ではありませんが、果敢に挑戦する気持ちを持ち、正々堂々とプレーしたいものです。
 なにより「地元に世界のトッププレーヤーがいる」って、スゴイことだと思いませんか?北都銀行バドミントン部のさらなる活躍を期待しています!!

【第2部】
 みなさんは「講談」というものをご存じですか?日本の伝統芸能のひとつで、「講談師」と言われる演者が、歴史にちなんだ読み物をストーリー仕立てで観客に伝えるものです。演者の前に「釈台」という台が置いてあって、時おり扇で「タン!」と台を叩きながら、メリハリのある話を展開していきます。
 今回、登壇してくださった日向(ひゅうが)ひまわりさんは、二代目神田山陽という方に憧れ、この世界に入ったそうです。講演会では、大同生命を興し、2015年度後期の連続テレビ小説「あさが来た」(NHK)のヒロインのモデルにもなった広岡浅子さんをテーマにした「九転十起の女」という講談を披露してくださいました。
 明治時代に大坂(大阪)の豪商「加島屋」に嫁ぎ、加島屋の再生をはかるため、当時の新ビジネスだった「炭鉱ビジネス」に賭けようと決意、熱い思いで事業に打ち込む―そんなくだりを、ひまわりさんは読んでくださいました。その話しぶりは、登場人物や表情、風景、音までもはっきり感じられるような、まさに「ストーリー」でした。
 講談師は見習いからスタートし、4年間の「前座」、10年間の「二つ目」を経て真打に昇進します。特に前座時代は、何百人という先輩のお茶の好みや着物のかけ方などを徹底的に叩き込み、楽屋では常に周りの前座の対応までよく見て、頭に入れ、何にでも対応できるよう神経を集中させているそうです。
 そうは言っても覚えごとは半年あれば吸収できるそう。ひまわりさんは「半年で大抵のことを覚えるのに、前座はなぜ4年間もあるのだろう」と不思議に思っていたそうです。そんなある日、ひまわりさんは先輩から呼び出され「やる気がないなら帰ってくれ」と突然言われます。「自分ではお茶出しもお着物も、きちんとやっているつもり。いったい何がいけないの?」と感じ、先輩に自分の何が足りないのかを聞いたそうです。
 その先輩の真意は、例えばお茶出しでも「本当にその人が飲みたい頃合いで出しているか?」といった、師匠や先輩が気持ちよく舞台に出られるよう、最大限、努めているのか?ということだったそうです。
 やっていたつもりのことを「足りない」と言われたひまわりさん。そう言われたうえで振舞ってみると、確かに何ひとつできていなかったそう。気持ちを切り替えてそこを追求したひまわりさんは、やがて「楽屋で師匠にしていることは、お客様にしていることと同じことだ」と気づきます。相手が心の底から楽しめたり、安心できたり、すべてお客様の喜びにつながっていることなんだと、感じることができたそうです。
 実際に自分が「二つ目」に昇進した際は、どの前座の方が一生懸命、真摯に努めているか、背中を見るだけで分かるようになったといいます。ひまわりさんは最後に「講談はその人物の心を読んで伝える芸。その商売をしている自分が、目の前にいる人の心を汲み取りたいという気持ちがなくなってしまったら、講談を読めなくなると思う。前座修行の中には、芸につながることがたくさんつまっていた」と振り返りました。