
TKC東北会秋田県支部主催の講演会~雲の上の町ゆすはら(高知県梼原町)の吉田尚人町長~
令和元年10月23日(水)、秋田市中通の「パーティーギャラリーイヤタカ」で開催されたTKC秋田県支部主催の講演会に、当法人の会員15名が参加しました。講師は高知県梼原町(ゆすはらちょう)の吉田尚人町長。「地域の宝物を活かしたまちづくり」のテーマでお話しいただきました。
高知市内から車で1時間半ほどの山あいにある檮原町は91%を森林が占め、標高1455mの雄大な四国カルストに抱かれているため、「雲の町」と呼ばれています。かの坂本龍馬が土佐を脱藩した際のルートにもなったほか、町内には新国立競技場の設計にも携わっている世界的建築家・隈研吾氏の手がけた施設が6つもあるなど、自然、歴史、文化といった様々な特色から、近年は超人気の観光スポットにもなっています。
明治の大合併で6つの村が合併した同町では、旧村を「区」として6区56集落が支え合っています。例えば地域福祉では、町立病院と社会福祉施設などが連携して課題を共有、6区に「地域福祉コーディネーター」を配置して自助・共助の力を高めています。
また、各区には地域住民による「集落活動センター」があり、高齢者の移動手段やガソリンスタンンドの確保、人口減や農地の遊休化といった山積する町の課題に各区が連携。集落活動センターのネットワーク「集落活動センターゆすはら」も誕生し、フェアの開催や道の駅整備計画といった新しいことに地域ぐるみで取り組んでいます。
町では移住定住にも注力。町が所有者から借り入れた空き家を改修して低廉な家賃で提供したり、新築・改築への支援を充実させたりと、様々な補助金を活用しながら「選ばれるまち」を目指しており、着実に成果を出しているそうです。
このほか、「18年間で子どもを育てる体制づくり」を目指し、「保幼小中高の一貫教育」を推進。小中一貫校の開校や、幼保連携型認定こども園への移行、地元の高校を存続させる体制づくりなど、地域住民も参画しながら人材の育成に取り組んでいます。
地域課題を解決する一連の取り組みを通じ、それまで漂っていた町の「あきらめ感」が、「やる気」に変化してきた、と町長は言います。「檮原で一生を過ごしたい」「住み慣れた地域で暮らしたい」「この地で楽しく生きたい」という思いで、数多くの施策に行政と住民が取り組んできました。
吉田町長は講演の終わりに「施策として仕掛け、きっかけをつくったのは行政かもしれないが、それをしっかりと受け止め、自分のこととして取り組んでくれたのは住民のみなさん。これから先も共に取り組み、未来の檮原を子どもたちに引き継いでいけるよう頑張りたい」と力を込めました。
行政がきっかけをつくり支援しながら、住民が自立して形をつくって自ら動き、町が持続的に発展する―これが本当の意味での「官民連携」であり、「まちづくりは人づくり」だと考えさせられた講演会でした。


