
「平成28年第3回定例会・講演会情報」
平成28年7月24日(日)、当法人主催で「まちづくり」特別講演会を、秋田公立美術大学 美術学科 小杉栄次郎 准教授を講師に迎え、秋田県ゆとり生活創造センター「遊学舎」にて開催し、約60名が参加(内当法人会員10名が参加)しました。
[講演概要]
テーマ 「都市の風景・街のディテール」
- 木造建築の歩みとして、江戸は世界最大の木造都市であったし、明治維新後に西洋から「工学」が持ち込まれる前までは、学校や工場などの大きな建物も木造で作られていた。
- 1950年の建築基準法制定により、都市の不燃化と木材の消費制限により、高層木材建築はできなくなった。
1987年同法が改正され、準防火地域での木造3階建ての建築が可能となり、2000年の改正では、どんな用途や規模でも木造で建築することが可能となった。
規制緩和がされたものの、大規模木造建築のノウハウが既になくなっていたため、高層木造研究会を立ち上げ、木造は弱く、大規模木造建築はできないという誤った認識を多くの人が持っている状況を打破する必要があった。 - Timberizeという組織を立ち上げ、伝統や慣習に捕らわれることなく、建築材料としてどんな場所でも、どんな用途でも使用できる木の可能性や、木造の美しさを研究し、多くの人にアピールするため、「都市木造」と名付け7つの都市木造を提案した。
東京都世田谷区下馬に、5階建木造集合住宅を建築する仕事を請け負い、4年でできる予定であったが、10年の歳月を費やすこととなった。その主な原因は、木造の可能性に対する社会の認知不足であり、建築費用をどこの金融機関も取り扱い規定により対象外となっており融資が受けれないためであった。
しかし2010年国は、再生産可能な循環資源である木材を使用する木造建築物整備を推奨し、「木のまち整備促進事業」の補助金制度が創設され、総事業費の20%が補助されることになり、着工に漕ぎ着けることができた。
この経験により、何か新しいことをやるときは、事業に関係する多くの人や行政とのコラボが必要と感じた。 - 都市の木質化は、世界的にも注目されており、ロンドンには9階建集合住宅、ウィーンにも5階建集合住宅、また商業施設なども少しずつ増えてきている。
- 秋田での取り組みとして、秋田ブルーラル(多次元、多角的な)構想を提唱。
JR秋田駅ポポロードに設置したあずまや風ベンチやカウンターなどのように、木による遊び心が必要であり、管理者目線でモノを作らないことである。
これからの木質化イノベーションとしては、駅待合室やタクシー乗り場付近などの木質化を図り、駅前交通広場を中心に「人の居場所」を作ることである。 - 秋田文化産業施設の旧料亭「松下」の木質化による改装を手掛けたが、今後は、管理者目線を持たない若者にも、秋田の「まちづくり」を考えてもらい、旧産業会館跡地や新屋駅(築100年経過)の木質化利用を研究していきたい。
- 木質化イノベーションでの「まちづくり」で忘れてはいけないこととして、計画的に森林を守りながら進めていくことが肝要である。