2024.04.22
令和6年4月16日、TKC東北会秋田県支部主催の特別講演会に、当会会員14名が参加しました。今回の講師は、精密宝石部品や光通信部品などの生産を手がけるOrbray株式会社の和田代表取締役副社長。横手市と湯沢市にも工場を持つ同社グループの純資産を、直近5年間で40億円から150億円まで大幅改善させた話題を中心に、経営改革のポイントを解説していただきました。
和田副社長は大学卒業後、三井住友銀行に4年半、勤務。その後は外資系コンサルティングファームで15年半、製造業を中心に国内外100社超の事業再構築などを手がけ、数億円、数十億円の債務超過から大幅な黒字改善を実現させた実績を数多くお持ちです。
同社は1939年に並木製作所として設立。1953年に並木精密宝石として組織変更、1989年には湯沢市にアキタ・アダマンドを設立し、2018年に両社を統合したアダマンド並木精密宝石に商号を変更しています。2019年までは先代の並木章二社長が経営していましたが、2021年からは並木里也子社長にバトンタッチされました。
他諸国の参入などに伴い2015年から売上は減少しはじめ、2011年に345億円だった売上高は2020年で144億円と半分以下に。並木精密宝石とアダマンドの統合により、本社費の大幅削減や工場の統廃合などによる人員削減など、抜本的な構造改革を行いました。
和田副社長は「単なる削減策だけではジリ貧に陥る」と危惧し、事業承継で社長となった里也子社長とともに、海外経営体制や医療向け製品・技術の強化、人工ダイヤ事業の強化といった事業面での改善のほか、国内従業員との面談や古い慣習の撤廃、社内コミュニケーションの促進、採用の強化などを行いました。その結果、40%強だった海外売上比率は70%まで増加。売上は1.5倍(240~250億円)に成長し、営業利益も30~40億円に改善しました。2023年にはアダマンド並木精密宝石とアキタ・アダマンドの統合により、Orbray株式会社に商号を変更しています。
また、採用の強化では、外部の人事・採用コンサルティングである株式会社All Personalに委託し、里也子社長と一緒に採用活動や人事制度、社内風土の改善を図っています。
和田副社長は里也子社長について、「社長になってまだ3年だが、従業員とのコミュニケーションや海外へのトップセールスなどに必死に取り組んでいることで、従業員にもようやく思いが伝わり始めた」と話します。
また、事業再生を果たすうえで重要なポイントとして◇経営の透明性・ガバナンス ◇トップの覚悟 ◇外部(顧問会計士・税理士、銀行など)からの厳しい意見 ◇外部(コンサルなど)のサポートを上手く借りる―という点をあげました。
このうち経営の透明性・ガバナンスについては、「弊社で赤字が膨らんだ2017年や、事業承継をした2020年は経営としても事業としても大きな節目だった」と振り返り、トップが現状を自分事として受け止め、覚悟を持って取り組んだことが短期間の業績改善につながったと分析。「構造改革で取引先や従業員に多大な迷惑をかけたことを真摯に受け止め、今後も改善に向け取り組みたい」と強調しました。
また、外部からの厳しい意見については、「課題や厳しい意見を有難いことだと捉えるケースは多いと実感している。社内だけでどうにかなる、ということは1つもない」と訴えました。
外部のサポートについては、「生産年齢人口が大幅に減少する見通しのなか、財務や経営企画などの部門でも人材が確保できなくなるという強い危機感を持っている。すべて自前で行うのが将来的に難しくなる時が訪れるだろう。アウトソーシングも次なる経営体制を考えるうえで重要なポイントだ」と訴えました。